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離職原因の分析方法|退職面談・サーベイ・行動データを重ねて「構造」を見つける5つの手順

経営者から「今年はなぜこんなに辞めたのか」と聞かれ、退職面談の記録を集計してみると、理由の大半が「一身上の都合」「キャリアアップ」「家庭の事情」。これでは何も決められません。離職原因の分析が難しいのは、本当の理由が本人の口から出にくいこと、そして1人ずつ見ていると「個人の事情」に見えてしまうことにあります。この記事では、20〜300人の会社の人事が、退職面談・サーベイ・行動データという3つの材料を重ねて、個人ではなく「構造」を見つけるための5つの手順を整理します。

離職原因の分析とは
退職した人について、その人がなぜ辞めたかを1人ずつ確かめることではなく、複数の退職を横に並べて、部署・上司・年次・時期などの共通点から「会社側で変えられる構造」を見つける作業。材料は退職面談の言葉、サーベイの回答、退職前の行動の変化、人事データ(評価・異動・入社年)の4つ。結論は「対策を1つ決めて効き目を測る」ところまで含む。

なぜ退職面談の集計だけでは、原因が分からないのか?

退職面談で語られる理由は、本人が「言ってもよいと判断した理由」であり、しかも1人分ずつでは個人の事情に見えるからです。分析には、本人の言葉以外の材料と、横に並べる視点が必要です。

退職を決めた人にとって、退職面談は最後の関係調整の場です。上司への不満や評価への疑問を正直に話しても、本人には何の得もありません。だから「キャリアアップのため」「家庭の事情で」という、誰も傷つけない理由が選ばれます。これは本人が嘘をついているのではなく、その場の力学として当然のことです。

厚生労働省「令和6年雇用動向調査」(公表 2025年8月26日、2026年9月確認)でも、令和6年の離職率14.2%のうち「個人的理由」による離職率は10.7%で、「事業所側の理由」の0.8%を大きく上回ります。この調査の離職理由は離職者がいた事業所が回答したもので、会社側から見た分類でも大半が「個人的」に寄る、という点は覚えておく価値があります。

もうひとつの壁は、1人ずつ見る癖です。3人が全部違う理由で辞めたように見えても、3人とも同じ上司の下で評価面談の1〜2か月後に辞めていたなら、それは個人の事情ではありません。原因分析は、理由を集計する作業ではなく、共通点を探す作業です。

手順①: 「退職」の定義と期間を、まず揃える

自己都合退職だけを対象にし、期間は直近12〜24か月に区切ります。定年・契約満了・会社都合を混ぜると、対策できないものまで数に入って、傾向がぼやけます。

最初にやるのは、数えることではなく決めることです。分母は年初の在籍者か期中の平均か、分子に定年退職や契約満了を含めるか。20〜300人の会社では年間の退職者が数人〜数十人なので、この定義のズレだけで倍近く数字が変わります。離職予防の目的なら、対象は「会社側が何かできたかもしれない退職」、つまり自己都合退職に絞ります。期間は直近12〜24か月。それより古いと組織も上司も変わっていて、いまの構造を映しません。10人未満なら統計的な傾向は出ないので、1人ずつの時系列を丁寧に見るほうが得られるものは多くなります。

手順②: 理由を5つの軸に分類し、「主因」と「きっかけ」を分ける

負荷・役割と成長・人間関係と上司・評価と処遇・働き方と家庭の5軸に分け、それぞれ「主因(積み重なった不満)」と「きっかけ(決断を後押しした出来事)」を別に記録します。「一身上の都合」は分類せず、空欄のままにします。

退職面談の記録や 1on1 のメモにある言葉を、次の5つの軸に振り分けます。1人につき1つではなく、主因ときっかけを分けて記録するのがポイントです。「評価に納得できない状態が半年続いていた(主因)ところに、同期が転職した(きっかけ)」のように、離職はほぼ必ず主因ときっかけの組み合わせで起きます。

軸主因になりやすいこときっかけになりやすいこと会社側で変えられるか
負荷特定の人への業務集中、慢性的な残業、休めない大型案件の終了、繁忙期の山変えられる(配分・採用・業務の見直し)
役割と成長同じ仕事の繰り返し、期待値が曖昧、学べないやりたかった仕事が他の人に渡った変えられる(役割の設計・機会の配分)
人間関係と上司上司との相性、チームの空気、相談相手がいない上司の交代、チーム再編、同僚の退職一部変えられる(配置・上司の支援)
評価と処遇評価の納得感、昇給の見通し、他社との差評価結果の通知、同業からの誘い一部変えられる(評価の説明・制度)
働き方と家庭通勤・リモートの可否、育児・介護との両立家庭の変化、転居一部変えられる(制度・柔軟性)

「一身上の都合」しか分からない人は、無理に分類せず空欄にします。空欄が多いこと自体が、「退職面談で本音が出ていない」という発見です。退職後1〜3か月たってから上司以外の人が短く話を聞くと、在職中には出なかった言葉が出ることがあります。

手順③: 部署・上司・年次・時期で「横に」比べる

退職者を、部署、直属の上司、入社からの年数、退職した時期(評価・異動・繁忙期との位置関係)の4つの切り口で並べます。どこかに固まりがあれば、それが構造です。

手順②で1人ずつの理由が分かっても、それだけでは対策は個別対応になります。ここで視点を横に切り替えます。退職者の一覧に、部署・上司・入社年・退職月・直前の評価・直前の異動を列として並べ、次の問いを立てます。

  • 部署: 人数比で見て、特定の部署に偏っていないか。偏っているなら、その部署の負荷・役割・上司を疑う。
  • 上司: 同じ上司の下から続けて辞めていないか。ただし、上司個人を責める材料にせず、その上司が置かれた状況(部下の人数、自身の業務量、着任からの期間)を見る。
  • 年次: 入社1年以内、2〜3年目、5年以上のどこに固まるか。1年以内なら立ち上がりの設計、2〜3年目なら役割と成長、5年以上なら評価と処遇を疑う。若手については 若手の早期離職をデータで防ぐ に詳しくまとめています。
  • 時期: 評価結果の通知や異動発表の1〜3か月後に固まっていないか。固まっていれば、そのイベントが「きっかけ」になっている。

この横比べは表計算ソフトで十分できます。数が少ないからこそ、「1人でも固まりに見えたら、まず現場に確かめる」ことが大事です。

手順④: 退職前の「行動の変化」を、時間軸で見返す

退職者について、退職の1〜3か月前に、発言・応答・会議参加・勤怠のどれが先に変わっていたかを見返します。本人の言葉が出なくても、行動の変化は「何が起きていたか」と「いつから」を教えてくれます。

退職面談で「一身上の都合」しか出なかった人でも、Slack の発言量、メンションへの返答の速さ、会議や 1on1 への参加、残業や出退勤には、退職の数か月前から変化が残っています。これは行動データによる原因分析で、本人の言葉に頼らずに「いつから、何が」を確かめる方法です。見るのは中身ではなく、量・頻度・速さ・参加の変化だけです。

大事なのは、退職日直前の30日を見ないことです。この時期は有給消化や引き継ぎで全ての指標が一斉に崩れ、それは「退職を伝えたあと」の姿で原因を教えてくれません。見るべきは2か月前〜1か月前、本人がまだ迷っていた時期に、どの系統が先に変わったかです。「評価面談のあとに会議への関わりが減った」のように、手順③で見つけたイベントと時間軸で重なれば、主因ときっかけの仮説が固まります。

ChordOne Retention の 振り返り は、この作業を自社データで行う画面です。過去の退職者について「退職の30〜60日前に1回以上兆候が出ていた人の割合」と「在籍者に同じ期間で出た割合との比」を系統ごとに表示し、退職日直前の30日は除外します。一般的な精度の数字は公表していませんが、「うちでは勤怠より先に会議への関わりが落ちる」といった自社の傾向を確かめられます。

手順⑤: 対策を1つ決め、効き目を測る

見つけた構造に対して対策を1つだけ決め、「何がどう変われば効いたと言えるか」を先に書いてから実行します。いくつも同時に始めると、何が効いたか分からなくなります。

原因分析の目的は、報告書を作ることではなく、次の退職を1人減らすことです。「評価制度を見直し、1on1 を導入し、サーベイを始め、福利厚生を拡充する」と全部やると、半年後に離職率が下がっても何が効いたか分かりません。対策は1つに絞り、成功の条件を先に決めます。「営業部の特定メンバーへの業務集中が主因」なら、対策は「担当の再配分」、効き目の指標は「再配分から2か月後に、対象メンバーの残業と応答の遅れが本人のベースラインに戻っているか」。「評価通知後に若手が辞める」なら、対策は「評価面談の直後に人事が別枠で話す」、指標は「次の評価サイクルで、通知後3か月以内の退職と兆候の出方」です。

ChordOne Retention では、気になる人に対応を記録すると、フォロー日にリスクの推移から「改善・変化なし・悪化」を自動で付けます。個人単位の効き目が残るので、「この対策は、この系統には効いた」という学びが次の人に活かせます。フォロー記録 は、原因分析の最後の手順を日常の運用に組み込むためのものです。

分析結果を、誰かを責める材料にしないためには?

結果を「上司の問題」ではなく「上司が置かれた状況の問題」として書き、退職者個人の行動データは本人が去ったあとも評価や処分に使わないと決めておくことです。この線引きがないと、次の分析に協力する人がいなくなります。

特定の上司の下に退職者が固まると、経営者はその上司の責任を問いたくなります。しかし多くの場合、その上司は部下が多すぎる、自分も現場を抱えている、着任直後で関係ができていない、という状況に置かれています。分析結果は「○○さんの下で3人辞めた」ではなく「部下8人を1人で見ながら自身も案件を抱える体制で、3人が続けて辞めた」と書き、支える材料にします。退職者の行動データも、原因分析のために見返すことと、評価や処分に使うことは別です。導入時に「結果を評価・処分に使わない」と社内に説明しておくことが、在籍者が安心して働き続けられる条件です。文例は 導入の流れ にあります。

まとめ

  • 退職面談の集計だけでは「一身上の都合」で止まる。本人の言葉以外の材料と、横に並べる視点が必要
  • 手順①: 自己都合退職に絞り、期間を直近12〜24か月に揃える
  • 手順②: 負荷・役割と成長・人間関係と上司・評価と処遇・働き方と家庭の5軸で、主因ときっかけを分けて記録する
  • 手順③: 部署・上司・年次・時期で横に比べ、固まりを見つける。1人でも固まりに見えたら現場に確かめる
  • 手順④: 退職の2〜1か月前の行動の変化を時間軸で見返す。最終月は見ない
  • 手順⑤: 対策は1つに絞り、成功の条件を先に決めて効き目を測る
  • 結果は誰かを責める材料にせず、状況を支える材料にする

ChordOne Retention は、手順④の振り返りと手順⑤の効き目の記録を、日々の「気になる人」の運用の中で自動的に積み上げます。20名まで無料で、21名以上は月200円/人です。離職1人あたりの費用の見積もりは 離職1人のコストの計算方法、用語の整理は 用語集 をご覧ください。

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