早期離職

若手の早期離職をデータで防ぐ|3年以内離職率の公的統計と、入社1年目の兆候の見方

「せっかく採った新卒が、2年目の春に辞めてしまった」。20〜300人の会社では、1人の早期離職が採用計画そのものを揺らします。この記事では、まず厚生労働省の公的統計で若手の早期離職がどのくらい起きているかを事業所規模別に確かめ、次に「入社1年目の兆候は、在籍の長い人とは見方が違う」という点を整理し、最初の90日・半年・1年で見るとよい指標と対策をまとめます。

早期離職とは
入社から比較的短い期間で退職すること。新卒については、厚生労働省が雇用保険の記録をもとに「就職後3年以内の離職率」として毎年公表しており、一般に「3年以内」が早期離職の目安として使われる。中途採用では「1年以内」を目安にすることが多い。

若手の早期離職は、どのくらい起きているのか?

新卒の就職後3年以内の離職率は、大学卒33.8%、高校卒37.9%です(令和4年3月卒業者)。事業所規模が小さいほど高く、30〜99人の事業所では大学卒41.9%、5〜29人では52.0%でした。

厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」(公表 2025年10月24日、2026年9月確認)によると、令和4年3月に卒業して就職した人のうち、3年以内に離職した割合は次のとおりです。前年(令和3年3月卒)と比べると、大学卒は1.1ポイント、高校卒は0.5ポイント低下しています。

事業所規模高校卒大学卒
全体37.9%33.8%
5人未満63.2%57.5%
5〜29人54.6%52.0%
30〜99人45.2%41.9%
100〜499人36.7%33.9%
500〜999人29.9%31.5%
1,000人以上26.3%27.0%

出典: 厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」事業所規模別就職後3年以内離職率(公表 2025年10月24日、2026年9月確認)。雇用保険の加入・離職記録から集計した値で、離職理由や離職後の就業状態は問わない。

この表で注目したいのは、20〜300人の会社が入る「5〜29人」「30〜99人」「100〜499人」の帯です。大学卒で見ると、100〜499人(33.9%)は全体平均とほぼ同じですが、30〜99人では41.9%、5〜29人では52.0%と、規模が小さくなるほど3人に1人から2人に1人へと上がります。中小企業が新卒を3人採用すれば、3年後に1人以上は残っていない、というのが統計上の平均的な姿です。

なお、この統計は「新卒として雇用保険に加入した人」を対象にしており、中途採用の若手や、雇用保険に入らない働き方は含みません。また、産業別では宿泊業・飲食サービス業(大学卒55.4%)、生活関連サービス業・娯楽業(同54.7%)、教育・学習支援業(同44.2%)が高く、業種による差も大きいことを踏まえて読む必要があります。

なぜ小さい会社ほど早期離職が多いのか?

統計は理由を示していませんが、実務では「立ち上がりの設計が属人的」「比較対象が社内に少ない」「上司が忙しく最初の違和感を拾えない」の3つが重なりやすいと考えられます。いずれも、仕組みで補えるものです。

大きな会社には、同期、研修、メンター制度、配属先の選択肢があります。小さな会社では、新卒は1人か2人で、教える人は現場の中堅で、その人自身も忙しい。最初の3か月に「この仕事が自分に合っているか分からない」「誰に聞けばよいか分からない」という状態が続いても、周囲は「まだ慣れていないだけ」と見過ごしがちです。

もうひとつ、小さな会社ならではの構造があります。若手の違和感は、上司との1対1の関係に強く依存します。上司との相性が悪い、上司が忙しくて 1on1 が流れる、といったことが、他に相談相手がいない環境では、そのまま「この会社に居場所がない」に変わります。だからこそ、上司個人の勘に頼らず、人事が横から立ち上がりを見られる仕組みが効きます。

入社1年目の兆候は、なぜ見方が違うのか?

在籍の長い人の兆候は「本人の過去との比較」で見ますが、入社直後はその「過去」がまだ無いからです。ベースラインができるまでの数か月は、変化ではなく「立ち上がりの軌道」を見ます。

離職予防で行動データを使うときの基本は、ベースライン(本人の過去との比較) です。「以前より発言が減った」「以前より返答が遅くなった」という変化を拾います。ところが、入社したばかりの人には「以前」がありません。最初の1か月は誰でも発言が少なく、質問が多く、会議では聞く側です。これを「活動量が低い」と見るのは間違いです。

そこで、入社1年目は2つの段階に分けて見ます。

  1. ベースライン形成期(入社〜3か月ごろ): 変化ではなく「軌道」を見る。発言・質問・会議での関わりが、週を追って増えているか。増えていない、または一度増えて減った場合が、気にかけるサイン。
  2. ベースライン確立後(3か月ごろ〜): 在籍の長い人と同じく、本人の過去との比較で変化を見る。ただし比較の「過去」が短いため、1〜2週間の揺れを兆候と取り違えないよう、継続を重視する。

ChordOne Retention では、すべての系統を本人の過去との比較で見るため、データが十分に溜まるまでは変化が出にくくなります。これは仕組み上の正直な限界で、「連携直後や入社直後は、在籍の長い人より兆候が出にくい」ことは理解して使う必要があります。その期間は、行動データより パルスサーベイ と 1on1 が主役です。

最初の90日・半年・1年で、何を見ればよいか?

90日は「関わりが増えているか」、半年は「役割が本人の言葉で語れるか」、1年は「在籍の長い人と同じ兆候の見方に切り替わっているか」を見ます。時期ごとに見る指標と対策が変わります。

時期見る指標気にかけるサイン対策の例
入社〜90日発言・質問の量の推移、1on1 の実施率、サーベイの回答質問が減ったのに成果も増えていない。1on1 が2回続けて流れた。サーベイで「相談相手がいない」1on1 を週1回に固定。教える人と評価する人を分ける。人事が月1回、上司とは別に話す
3〜6か月会議での関わり、他部署とのやりとり、残業の出方会議で聞く側のまま関わりが増えない。残業が急に増える、または消える役割と期待値を紙に書いて本人と確認。小さく完結する仕事を1つ任せる
6か月〜1年本人の過去との比較(在籍の長い人と同じ見方に移行)形成されたベースラインから、活動量・応答・会議参加が下がる。勤続意向の回答が下がる半年の振り返り面談で「1年後にやりたいこと」を聞く。キャリアの選択肢を具体的に示す
1〜3年在籍の長い人と同じ系統で見る。評価・異動・上司交代の前後に注意評価のあとに関わりが減る。同期や近い年次の退職のあとに変化が出る評価の納得感を確かめる 1on1。役割の変更や、他部署の仕事を経験する機会

この表の「気にかけるサイン」は、いずれも単独では判断しません。「質問が減った」だけなら慣れてきた証拠かもしれません。「質問が減った」のに「成果も増えていない」「1on1 も流れている」と重なったときに、上司か人事が声をかけます。1つの兆候で判断しない考え方は 退職の兆候はデータにどう出るか に書いています。

人事は、上司の代わりに何ができるか?

上司とは別の窓口になること、部門をまたいで立ち上がりを横に比べること、上司自身の負荷を見ることの3つです。若手の早期離職は、上司の問題として片づけると再発します。

小さな会社の人事は1〜2人で、全員の 1on1 に同席することはできません。できるのは、若手が「上司以外に話せる人」を持てるようにすること、そして部門ごとの立ち上がりを横に並べて、特定の部門やマネージャーの下で若手が続けて辞めていないかを見ることです。

ChordOne Retention では、「気になる人」の一覧を部署で絞り込めます。同じ部署で複数の若手に同じ系統の兆候が出ていれば、個人ではなく業務配分やマネジメントの問題を疑えます。また、上司自身の残業や会議の増え方も同じ一覧に出るので、「上司が忙しすぎて若手を見られていない」という構造にも気づけます。若手を支える前に、上司を支える必要があることは少なくありません。

自社の若手は、辞める前にどんな兆候が出ていたか?

過去に早期離職した人について、退職の1〜2か月前にどの系統が出ていたかを自社データで確かめると、次の若手への見方が決まります。一般的な精度の数字より、自社の傾向のほうが役に立ちます。

統計は「どのくらい辞めるか」を教えてくれますが、「自社では誰がどう辞めたか」は自社のデータにしかありません。ChordOne Retention の 振り返り は、過去の退職者について「退職の30〜60日前に1回以上兆候が出ていた人の割合」と「在籍者に同じ期間で出た割合との比」を、系統ごとに自社データで表示します。退職日直前の30日は、有給消化などで全指標が崩れる時期なので分析から外しています。

若手の退職者が数人しかいない会社では、この数字は目安にすぎません。それでも「うちの若手は、会議への関わりが先に落ちる」「勤怠より先に応答が遅くなる」といった自社の傾向が見えれば、次の若手の立ち上がりで何を見ればよいかが決まります。数字を約束する代わりに、自社で確認できる形にしているのはこのためです。

まとめ

  • 新卒の3年以内離職率は大学卒33.8%、高校卒37.9%。30〜99人の事業所では大学卒41.9%、5〜29人では52.0%と、規模が小さいほど高い(厚生労働省、2025年10月公表)
  • 小さい会社では、立ち上がりの設計・比較対象・上司の余裕が不足しやすい。仕組みで補う
  • 入社1年目は「本人の過去」が無いため、最初の3か月は変化ではなく軌道を見る。行動データより 1on1 とサーベイが主役
  • 90日・半年・1年で見る指標と対策は変わる。サインは重なりで判断する
  • 人事は上司とは別の窓口になり、部門を横に比べ、上司自身の負荷も見る
  • 自社の過去の退職者の兆候を振り返ると、次の若手で何を見ればよいかが決まる

ChordOne Retention は、Slack か Google Workspace をつなぐだけで翌朝から動き、部門単位で小さく始められます。20名まで無料で、21名以上は月200円/人です。離職1人にかかる費用の目安は 離職1人のコストの計算方法、用語の整理は 用語集 をご覧ください。

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