1on1

離職の兆候に気づいたあとの1on1|詰問せず気持ちを聞く面談の進め方と質問例

「最近、あの人の様子が変わった」と気づいたとき、いちばん難しいのは気づくことではなく、その後にどう話すかです。「辞めるの?」と聞けば、まだ迷っていた人の背中を押してしまいます。データを見せれば、見られていたという不信だけが残ります。この記事では、兆候に気づいたあとの 1on1 を「引き止め面談」ではなく「普段より少し丁寧に聞く時間」にするための原則、質問例、記録の残し方をまとめます。

兆候に気づいたあとの 1on1 とは
退職を思わせる変化に気づいたときに行う、通常の 1on1 の延長としての対話。目的は「辞めるかどうかを確認する」ことではなく、「いま何に困っているか、どうなれば楽になるか」を本人の言葉で聞き、会社側が動ける選択肢を渡すこと。兆候そのものは会話の材料にせず、きっかけとしてだけ使う。

兆候に気づいたあと、どんな姿勢で話せばよいか?

①詰問しない、②事実ではなく気持ちを聞く、③選択肢を提示する、の3つです。兆候を「証拠」として扱った瞬間に、会話は取り調べになります。

① 詰問しない

「最近 Slack 静かだけど、何かあった?」は事実の指摘です。本人には「見られていた」と伝わり、以後の行動はさらに慎重になります。兆候は上司が知っているだけでよく、口に出す必要はありません。切り出しは「最近どう?」「今の仕事量、無理ない?」といった、いつも聞いていることで十分です。そのために普段から 1on1 の習慣があると、この場面での違和感が消えます。

② 事実ではなく気持ちを聞く

「○○のプロジェクトはどうなってる?」は進捗確認で、「○○のプロジェクト、やってて楽しい? しんどい?」は気持ちの確認です。退職を考えている人の多くは、事実は淡々と報告できますが、気持ちを聞かれると言葉が止まります。その間を待つのが、この 1on1 でいちばん大事な時間です。

③ 選択肢を提示する

話を聞いたあと、「何かできることある?」と丸投げすると、本人は「特にないです」としか答えられません。会社側が動ける具体的な選択肢——業務の一部を外す、役割を変える、リモート日を増やす、学びの機会を作る、人事と別に話す——を2〜3個並べ、「どれか近いものある?」と聞くほうが、本人は答えやすくなります。

そのまま使える質問例はあるか?

負荷・役割・人間関係・キャリアの4領域について、「気持ち」を聞く形の質問を用意しました。全部聞く必要はなく、本人が言葉を止めた領域を深めます。

領域入り口の質問深める質問
負荷「最近の仕事量、正直どう?」「いちばん重いのはどれ? それが半分になったら何が変わる?」
役割「今やってる仕事、自分に合ってると思う?」「もっとやりたいこと、逆にやめたいことはある?」
人間関係「チームの中で、話しやすい人・話しにくい人っている?」「その関係で、仕事がやりにくくなってることはある?」
キャリア「1年後、どんな仕事をしていたい?」「それに向かって、今の環境で足りてないものは何?」
締め「今日話したこと、何か動いてほしいことある?」「いくつか選択肢を考えてきたんだけど、近いものはある?」

これらの質問は「兆候が出ていたから」ではなく、どの 1on1 でも使えるものです。むしろ、兆候が出た人にだけ急に深い質問をすると「なぜ今日は違うのか」と気づかれます。普段からこの深さで話していることが、兆候に気づいたときの最良の準備です。

やってはいけないことは何か?

データを見せる、「辞めるの?」と直接聞く、その場で条件を提示する、他のメンバーに聞き回る、の4つです。いずれも短期的には情報が得られても、信頼を失います。

  • データを見せる。「こういう数字が出ている」と説明した瞬間、以後の行動データは本人が意識して作るものになり、指標として意味を失います。何より、見られていたという印象は消えません。
  • 「辞めるの?」と聞く。まだ迷っている人に、辞めるという選択肢を言葉にさせてしまいます。聞くべきは「辞めるか」ではなく「何に困っているか」です。
  • その場で条件を出す。「給与を上げるから残って」は、不満の中身を聞かずに蓋をする行為です。次に不満が出たときに同じ手が使えず、周囲との公平性も崩れます。
  • 他のメンバーに聞き回る。「あの人、最近どう?」と周囲に聞くと、本人に必ず伝わります。聞くなら本人に。

1on1 の記録は、どう残せばよいか?

「話した事実」「本人の言葉(気持ち)」「決めた次の一手」「見直す日」の4点を、本人が読んでも問題ない書き方で残します。記録の目的は、フォロー日に効き目を見返すことです。

記録は次の4点で十分です。長い議事録は書く側の負担になり、続きません。

  1. 話した事実: 「業務量について話した」「キャリアの希望を聞いた」程度の短い記述。
  2. 本人の言葉: 「レビューが重なると土日に持ち越す」「もう少し設計に関わりたい」など、本人の表現をそのまま。解釈を混ぜない。
  3. 次の一手: 「レビュー担当を1件外す」「設計会議に参加してもらう」「人事と別に話す場を作る」。誰がいつまでにやるかを添える。
  4. 見直す日: 2〜4週間後に、変化があったか確かめる日。

「本人が読んでも問題ない書き方」を基準にすると、自然と評価的な表現や憶測が消えます。「離職リスク高」「モチベ低下」のようなラベルではなく、本人の言葉と会社が動くことを書きます。ChordOne Retention では、「気になる人」の一覧から 1on1 を予定し、対応内容と見直す日を同じ画面に記録できます。「様子を見る」と決めた場合も、いつまで待つかを決めて記録すれば、放置になりません。

同じチームで複数人に兆候が出ていたら?

個人の問題ではなく、業務配分やマネジメントの構造を疑います。1人ずつ 1on1 を重ねるより先に、チーム全体の負荷と役割を見直すほうが効きます。

退職の兆候が特定のチームに固まって出るとき、原因は個人ではなく環境にあることが多いです。特定の人に業務が集中している、マネージャーが変わった、期の目標が現実的でない、といった構造の問題です。この場合、個別の 1on1 で気持ちを聞きつつも、対処はチーム単位で行います。ChordOne Retention の一覧を部署で絞り込めば、この偏りに気づけます。兆候の系統については 退職の兆候はデータにどう出るか に、検知の考え方については 退職予兆の検知とは にまとめています。

声をかける時期は、いつがよいか?

兆候が出はじめて数週間以内、つまり退職の1〜2か月前が、会社側にまだ選択肢がある時期です。本人が退職を伝えた後では、聞けることは減り、動かせるものも少なくなります。

退職を決めた人の多くは、退職日の2〜4週間前に申し出ます。その時点で会社ができることはほぼ引き継ぎの調整だけです。一方、兆候が出はじめる時期は、多くの場合その1〜2か月前で、本人もまだ迷っています。この時期に「普段より少し丁寧に聞く」1on1 ができれば、業務の負荷を減らす、役割を変える、といった選択肢がまだ有効です。だからこそ、兆候に気づいた週のうちに 1on1 を予定することを勧めています。「次の定例で」と後回しにすると、その1〜2週間で状況は固まります。

まとめ

  • 姿勢は「詰問しない・気持ちを聞く・選択肢を提示する」。兆候は口に出さず、きっかけとしてだけ使う
  • 質問は負荷・役割・人間関係・キャリアの4領域を「気持ち」の形で聞く。普段からこの深さで話しておく
  • データを見せない、「辞めるの?」と聞かない、その場で条件を出さない、周囲に聞き回らない
  • 記録は「事実・本人の言葉・次の一手・見直す日」の4点。本人が読んでも問題ない書き方で
  • チームに固まって出たら構造を疑う。声をかけるのは兆候が出た週のうちに

ChordOne Retention は、気づく(気になる人一覧)→ 動く(1on1 の設定・記録)→ 見返す(フォロー日と振り返り)を1つの画面でつなぎます。導入の流れ と 料金 をご覧ください。20名まで無料です。

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